30歳女教師、15歳女子高生になる。

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この部屋のカーテンと窓は常に閉まっている。今は夜だからそれは普通のことなのだが、朝も同様である。だからこの部屋に朝日とか小鳥のさえずりとか、そのような爽やかさは差し込まない。おまけに床には物が散乱している。衣類、紙類、書籍、菓子のパッケージなどが、あるべき場所に収められないままフローリングを覆っていて、どんよりとした雰囲気作りに一役買っていた。もちろん部屋の主もどんよりしている。 私は中学校の国語教師だ。八倉早矢(やくらさや)、30歳、女、独身、彼氏なし。昨今の独立した女性によくある、男を必要としない人生を選択したわけではない。だが、男性とお付き合いに至ってもあまり長続きすることがなく、今はこうして散らかった部屋で缶ビールをあおり、孤独を紛らわしている。なんとなく点けているテレビにはニュースのリポーターが映し出され、声が部屋に広がるが、私の意識を素通りしていく。私は酒に弱い。2本目に入ったばかりだがそこそこ酔っている気がする。 「酔ってねぇわい」     
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