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終わっていく事ばかりだ
今日も無駄でどうしようもない一日が終わったのだ
それは、いつか訪れるべくして訪れ
それをどうして?と問う人は稀に居るぐらいだろう
そしてまた明日が来るのだ
退屈と喧騒と焦燥の明日が来たのだ
貴女が本を手にした
「この本貴方にとても似ているのよ」
本に似る、面白い表現だ。
貴女が続けて自慢げに語る本の内容は僕もあの子も、
よく知っている作品だ。
「あぁ今流行のやつですね」
僕らの中ではとっくに過ぎた流行なんだけどね。
と、言えるわけもなく、
瞳を閉じて薄い瞼の裏側から外を眺める。
卯月の風が飛び込んで僕の前から去っていく。
「春だ」
心がちっとも躍らなかった、
また春が来たのだと、28回目の春が。
病院から抜け出し夜の街へ、
「こんばんわ」
他人の挨拶をかわし春を探しに街へ融けてゆく。
季節の匂いをしっかり鼻で感じ、ため息を溢す。
いつもの景色が飛び込んで、
いつもの道、いつもの時間、
いつものタイミングで眼の前を黒猫が横切り、
黄色く淡い眼で僕を凝視めて
「にゃーお」とかわいい声で啼いた。
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