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目が覚めたら、もうすっかり昼を過ぎていた。起きるのが少し面倒ではあったが、腹が鳴る身体の訴えには勝てず、俺はサイドテーブルの眼鏡を掴み起き上がる。
寝癖の付いた頭を掻きながら戸を引けば、ソファの片隅に見るからにアイロン済みの、整然とした洗濯物の山を見つけた。
そして近くへ行きそれを見下ろすと、昨日まで床に散らばっていたメモ紙もまとめられ、テーブルの上に整頓されている。
「家政婦かあいつは」
最近自分で部屋を掃除した記憶がない。壁にぶら下がったメッセージボードに書かれた三木の文字を目で追いながら、俺は小さく肩をすくめた。
「そういや遅いんだったなあいつ。冷蔵庫におかず……んな、こと言ってたなそう言えば」
冷蔵庫を覗くと、そこにはラップの掛けられた皿がいくつか入っていた。俺は適当にそれを取り出し電子レンジに放り込んだ。
そして炊飯器の保温ランプが点っているのを確認し、ミネラルウォーターのボトルを片手にリビングのソファに座る。
「こっちで寝りゃいいのに」
もたれたソファの背に腕を置き、俺は小さくため息を吐いた。手足の長い三木には物足りないかもしれないが、物置にあるソファと違ってこちらは背を倒せば、そこそこ使えるベッドになる。
けれどそれでもこちらを使わないのは、俺のいる部屋に物音が響くからだ。
「そろそろ、引っ越しするか」
三木がここへ来るようになってもう随分経つ。
仕事の利便性で引っ越ししないままだったが、こうも二人の生活がバラバラだと不便が多い。
時間が合えば、三木は勝手に人のベッドに潜り込んでくるが、そうでなければこのリビングや物置で寝ている。
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