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いつの間にか一緒にいるようになって、そしてそれが当たり前のようになってきた頃から、不安にはならないかと周りによく聞かれるようになった。
気まぐれや間違いだと思いやしないのかと、何度も言われた。しかし不思議と自分は、いままであいつの行動や言動を疑ったことが一度もない。
それはなぜかと聞かれても、ないものはないのだとしか言いようがなく、それの答えは随分と経ったいまも、変わらないはずだった。
「広海、まだワン公と付き合ってんの? 意外と長くね?」
カウンターとテーブル数席しかない、さして広くもない小さなバーには、その半数を埋めるほど客の姿が見受けられた。
そんな手狭な店内で、カウンターの奥二席を占拠してかれこれ二時間ほどか。そのうち間違いなく三十分以上は寝ていた男が、急に思い出したように人の顔を指さした。
「早く終わるとみんな思ってたんだけどなぁ」
「どうせ賭けてたんだろ。お前らの得意ワザだよな」
肩をすくめ脱色した頭を掻くその仕草に目を細めれば、ニヤニヤと笑って男は、空になった自分の煙草の箱をくしゃりと握り、人の煙草を抜き取る。
久しぶりに会ったが、驚くほどに能天気で大学の頃から、全く成長がない男だ。
「まぁな、全員別れるって言うから全然賭けになんなかったけどな」
「そりゃ悪かったな」
「マジありえないって、お前ら付き合い始めてどれくらいだよ。大学の頃からだと五年くらい経つんじゃね?」
「どうだろうな」
この男を含めて五人。大学時代よくつるんでいた奴らがいる。とにかく面白いと思ったことは、なんでも賭け事に発展させる大騒ぎが好きな集団だ。
「だってよ、お前がああいうタイプと上手く行くとは思わないだろ。広海はおしゃべりな奴も束縛する奴も嫌いじゃん」
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