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「よく瑛治くん休憩室で電話してるでしょ。ほかの人に聞いたら、かなり前から彼女がいるって」
「あっ、そうなんだ、みんな結構知ってるんだ」
そういえばよく歳上の彼女羨ましいなぁと、同僚に揶揄されることはあった気がする。
しかも歳上の、と限定されているということは、おそらく俺が「広海先輩」と呼んでいるのを聞いているからだろう。
これから電話する時は背後に気をつけなければ、いつどこで誰が聞いているかわからないな。
いまはまだそれが彼女ではなく、本当は彼氏なんだということはバレてはいないようだが、いつか知られてしまうことになるかもしれない。
それにしても――
「知ってるのになんで、俺なの?」
たまにあるが、なんで付き合ってる人がいるのを知っているのに、わざわざ告白してくるんだろうか。
あまり接点がなくて知らなかったらなわかる。実際に付き合っているのは男の人だから、普通に見たら俺の周りは女っ気はまるでない。
でも知っているのになぜ、声をかけるんだろう。いままでこういう場面に遭遇することがなかったから、俺が色々と疎いだけなんだろうか。
「それは、その、付き合ってる人がいるってわかっても、やっぱり好きなの」
それは駄目もとでも、声をかけてその人の視界に入りたいということか。
正直、その気持ちはすごくよくわかる。俺自身もそう思って広海先輩に告白をした人間だから、気持ちは痛いほどわかる、けど。
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