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飲みに行くと言っていたので居酒屋も考えたけれど、味で選ぶならこっちだ。とりあえずビールは頼んだが、お酒はまた場所を変えてゆっくり飲めばいい。
夜遅くまでやっているこの店は、いつも仕事帰りのサラリーマンで溢れ返っている。
そんな中で鯖の味噌煮定食を頬張る広海先輩は、見た目のよさで少々浮いてはいるけれど、幸せそうに食べてる姿を見られて俺は満足だ。
「ヒレカツも美味しいよ」
俺の手元にある、サクサクの衣をまとったミックスフライ定食の中から、肉厚のヒレカツを選んで皿の隅に乗せてあげる。
するとちらりとこちらに視線を向けてから、広海先輩はそれをぱくりと口に運んだ。
瞬間、微かに見えた舌先がちょっとエロいなぁと、思ったけれど、それはなんとか心の中に押しとどめた。
でもゆっくりと咀嚼して飲み込む喉元を見ながら、そういえば最近ご無沙汰だなと、やはりそちらの方から頭が離れなかった。
「お前、もの欲しそうな顔してこっち見んな」
「あ、ごめんなさい」
やましい気持ちは、やはりすぐに気取られてしまうようで、眉をひそめてこちらを睨まれてしまった。
ため息混じりに食事を続ける、先輩に申しわけないと思いつつも、つい唇や指先、喉元を視線で追ってしまう。
明日が休みなら今夜したいなぁ――と、ぼんやり考えていたら、テーブルの下でつま先を蹴り飛ばされた。
慌てて前を見れば「顔に締まりがない」と舌打ちされてしまった。
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