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恐らくいまのこの状況を誰かに言われたか、遠まわしに否定されたかのどちらかだろう。
「好きだから、ずっとずっと好きだから」
「おい、自己完結すんな。俺の意思を尊重しろ」
ますます腕の力を込める男の頭を叩き、肘鉄を食らわすと、無理やり身体を引き剥がした。
小さく呻いた三木を振り返れば、涙目でわき腹を押さえて、恨めしそうな顔でこちらを見ている。
「なんだ、そろそろ目を醒ませとでも言われたか」
元々三木はノーマルだ。
大学の時に一体なにをトチ狂ったか、突然俺に告白してきた日には自分の耳を疑った。同じ匂いがする奴はなんとなく分かるものだが、こいつに関しては完全なるノンケだった。
「俺は最初から寝てなんかいません」
「馬鹿、そういうこと言ってねぇだろ」
「俺は先輩が先輩である限り、男だろうが女だろうが、犬だろうが猫だろうが……この際、猿でも羊でも馬でも象でも、なんだって好きです」
真面目な顔をして、息も絶え絶えに捲くし立てる三木に、思わず唖然とした。
「いや、それは俺が困る」
呆れた目で見ながらゆるりと首を振った俺に、三木は少しだけムッと口を尖らせた。
「とにかく! 絶対に俺は広海先輩じゃなきゃ駄目なんです」
酔っ払ってんだか、真剣なんだか分からないが。とりあえず恥ずかしいことを言っているのはよく分かる。
「で? だったらなんで落ちてんだよ」
「先輩は……もし、俺と出会わなかったら、もっと幸せになってたかもって、思うことありますか」
「は? 俺?」
何故そこで俺に順番が回ってくるのか。
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