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「だって、元々先輩は男の人も女の人も平気だったでしょ。しかも俺のせいで立場逆になっちゃったし」
「いや、いつでも交換してくれて構わないぞ」
「絶対嫌です」
間髪入れずに俺の言葉を遮りながら、三木はずいと間を詰めて俺を正面から抱きこんだ。
「みんな俺が先輩に告白しなければ、先輩もいい人見つけて、もしかしたら結婚だって出来たかもしれない、とか言うんです。確かに先輩は誰が見たってカッコイイです。シュッとしてて、手のひらに収まるくらい小さいこの秀麗な顔も、ちょっときつい感じの目も、色っぽい薄い唇も、サラサラな綺麗な黒髪も、すらりとして手足の長いモデルさんみたいなとこも、全部完璧ですっ。だからいくらでも相手は選り取り見取りなのは分かってます、けど……そんなの、俺は嫌です」
「お前、うざい」
熱弁振るう三木を冷ややかな目で見て、こちらはかなりのドン引きだ。
「あのなぁ、ほんとに選り取り見取りで選ぶような俺だったら、お前はいまここにいねぇよ」
顔や見た目の出来がいい中にこいつがいたって冴えやしない。もしも本当に選り取り見取りで選び放題だと言うならば、普通に考えたらわざわざこいつを選ぶ理由がない。三木は背が高いばっかりで、お人好しなくらいしか取り柄のない男だ。
先ほどからどうにも言葉が飛躍している男に、俺はうな垂れ肩を落とした。
「ったく、馬鹿じゃねぇの。それは遠まわしに男なんか相手にしてんなって言われてんだろうが。俺がどうこうって話じゃねぇだろ」
三木の単純過ぎる脳みそに呆れる。どう考えたって、みんなでこいつを軌道修正しようとしてるとしか思えない。
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