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普段は朝に三木が起こしに来るので、リビングのメッセージボードに絶対に起こすなと書いて置いた。
いまこいつが仕事へ出る時間なのであれば、恐らくまだ七時かそれを過ぎた頃だ。
「一時間も寝てない」
「だから、起こすつもりじゃなかったんですってば」
「重い」
覆い被さるように布団の上から抱きつかれ、くぐもった声で文句を言えば、布団の端から出ていた頭のてっぺんに唇を落とされた。
「最近、広海先輩の顔見てなかったから。ちょっと見たくなっただけ」
「……」
そういえば最近は、時間が噛み合うところが殆どなかった。
こちらを見下ろしている視線を感じ、ほんの少しだけ布団の端から顔を出せば、三木は嬉しそうに頬を緩めた。
元々不規則なシフトの三木と、仕事の状況によって変則的に時間が変わる、俺の生活は少々ズレていた。
特に近頃は締め切りに追われた俺が殆ど家にいなかったり、今日のように明け方まで部屋に篭もって仕事をしたりで、こいつの顔を見るのは多分一週間ぶりくらいだ。
「お前どこで寝てた」
「え? んー、客間」
俺の問いに、目を瞬かせた三木はへらりと笑みを浮かべるが、俺は逆に眉をひそめた。
客間と言えば聞こえはいいが、玄関横にあるあそこは殆ど物置だ。辛うじて使わなくなったソファがあるので、そこで寝たのだろう。
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