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川にかかる橋が見えてきた頃、私は一瞬言葉を失った。
川縁に沿って咲く桜は見事に満開を迎えていた。和紙を千切って作ったような淡い桜色が、見渡す限り続いている。
橋の上では皆カメラを構えていた。本格的な一眼や、スマホや、デジカメ。思い思いのレンズが、桜を捕らえている。
『綺麗だっていうからデジカメ持ってきたけど、正解だったな』
『写真好きなの?』
『…高校の修学旅行以来』
花びらが舞う風に乗ってシャッター音が響く。そう言って笑い合ったあの時、胸を満たしていた感情は確かに「幸せ」だった。
私はふと持ってきたスマホを取り出した。カメラを起動し、画面越しに桜を見る。
ぼんやりとして上手く撮影することが出来ない。それは操作のせいか性能のせいか、それとも私の瞳が潤んででもいるのだろうか。
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