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近衛 響也先輩。180センチを超えるクマのように大きな人。がっしりした筋肉はユニフォームからも分かる。真黒に日焼けして、真面目そうで寡黙で硬派。
凛々しくて意志の強そうな眉は吊り上がっている。高い鼻、ごつごつした大きな手。
足の先から頭のてっぺんまで見とれてしまうほど隙のない格好良さ。
私なんかが話しかけたら睨まれるだけだと思っていた。
そんな人が、私のピアノを聴きながら鼻歌を歌っている。
「何の曲?」
「え、あの、野球部の応援歌、です」
「ああ、知ってると思った。違う曲がいい。眠たくなるような、優しいやつ」
「り、了解です」
「ギコギコ、音がするのがいい」
「ペダル、ですね」
顔に帽子を乗せているので表情は分からなかった。でもきっと帽子を取ったどころで眠っている先輩しかいないのだと分かっている。
奇妙な放課後のつかの間の時間。けれど居心地は悪くなかった。
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