先輩は私たちのヒーローだ。

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「私のリボン、甲子園まで先輩と一緒に居られるんですね」 くずぐったくてはにかむと、周りから黄色い声を上げた。 「近衛部長がお守りを一年に頼んだ!」 「えええ? 御守り?」 皆がざわめくのをぽかんとしていると、先輩が貰ったリボンを強く握り締めながら頷く。 「代々、野球部の部長は恋人のリボンを御守りのポケットに入れて試合に臨むらしいらしい。恋人など現をぬかすことなど出来ないか、俺はお前ならば喜んで頼める」 「ええっと、あ、恋人が居ないから縁起が良さそうな私ってことですか?」 一瞬びっくりしたが、それならば周りも納得だろう。 「お前がそう思うならばそれでいい。俺は甲子園で優勝するまで自分の気持ちを伝える気はないから」 「ほ、ほう?」 「邪魔した。失礼する」 近衛部長は私に一礼したあと、座っている生徒に数秒頭を下げて、三年校舎へ戻って行く。いつも通りの後姿だけど、私の顔は背中が遠くなるにつれてまっかになった。 「え? えええ? えええええええ?」
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