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さらさらと、砂時計の砂が落ちるような音に目が覚めた。
カーテンを少し開けると、雨が降っている。夕べはあんなに晴れていたのに…。
「マヒル、おはよう」
「おはよ」
「…?」
僕はマヒルをもう一度見た。
自分で答えたのかと思ってどきりとした。
夢ではない。
目を開け、ゆっくり上体を起こすマヒルを僕は思わす、抱きしめた。
「マヒル…マヒル。目覚めたんだね…」
「ん…そろそろ、交代しようよ」
「え?」
自分の声のように聞こえた耳元の囁き。
深い吐息が入り込み、身体の力がすうっと抜けていくのがわかる。
暗くなった瞼の裏側に何かが貼り付いて見えた。
丸い…
ブラッドムーン…。
「ヒロ、おはよ」
「ああ、なんだよ。雨かよ」
「夕べはいい天気だったのにね」
ヒロは傘を差し掛ける僕をじっと見ていた。
何を?何処を?凝視している?
「マヒル…」
「何?」
ああ、いけない。つい返事した。
父さんも母さんも気づかなかったのに…。
鋭いな。
「ヒロォ、置いて行くよぉ」
地面に開いた傘が雨を受けている。
ヒロはその場に立ち竦んでいた。
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