プロローグ

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(カジュアル……) 参加者の女性たちは皆着飾っている。男性たちもそうだ。アクセサリーをつけている者も多い。それでもビギナーズラックというものなのか、連絡先を聞かれたし、名刺をもらったりもした。だがそれっきりである。パーティの中盤ともなれば壁際が定位置になってすっかり収まっていた。 (これは用意が必要だった) まずコミュニケーションが取れない。あまり喋る方ではないと自覚があったが、ああいう場面ではしゃべることがすべてといってもいいとあの短時間で学習した。そして外見である。大勢いた中でも特に多くの男性から話しかけられていた女性は、華やかなドレス姿で露出が多いにも関わらず上品で清潔感があった。壁の花にもなれずにいる桃子にも親切だった。 「あなた、こういうところって初めて?わたしは初めてなの」 モゴモゴ言っている桃子にアイスティのグラスを差し出してにっこりしてくれた。自分が男なら、いや女の今でも惚れてしまいまそうなにっこりである。揺れるイヤリングも綺麗だ。 聞きたいことで胸の中がいっぱいになった瞬間、彼女はまた男たちに囲まれてしまいその機会は二度となかった。 (なんだろう) 目で追う彼女の頬には自分と同じ位置にえくぼがあった。 (なに……?) 妙に惹かれるところがあった。そして随分昔、自分がまだ幼稚園に通っていた時のことを突然思い出した。 (そうだ、私あんなふうになりたかったんだ)     
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