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「お疲れ様です」 「今晩お時間ありますか」 「すみません。約束が」 「そうですか」 やっときたエレベータに藤田が乗り込むと桃子も続いて入った。先客がすでに二人いて、どちらも藤田を見るなり目礼する。 重苦しい空気に辟易としながら桃子は藤田の傍らで小さく立っていた。先客が降りると藤田が桃子に向き直る。 「約束というのは琴浦ですか」 答えられず困って見上げていると、藤田は神経質そうに目を細めた。 「弱みでも握られてるんですか」 ある意味ではそうだが答え方によって勘違いされそうだ。だからこそしっかり考えて答えねば。 そう思って口を開いたのに、桃子が話し終わる前に藤田が桃子の肩を掴んだ。 「私はあなたの上司です。塚本のこともある」 「でも」 すでに琴浦と付き合うと決めているのだ。一言それが言えればいいのに、桃子が喋ろうとすると藤田が首を横に振った。 「任せて。大丈夫です」 藤田はさっきの琴浦との話を聞いていたのだろう。桃子が台車を片付けて自分のデスクへ戻ると、藤田も自分の帰り支度を済ませてやってくる。 「下にいるんですか」 「たぶんもういるかと」 「行きましょう」
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