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部屋を出ると河合とすれ違った。桃子と藤田が一緒にいるのを見て面白そうな顔をし頷く。
(あとで言うけど、今助けてほしいよ)
エレベータは帰る人らがいっぱいだった。藤田は乗り込んだが桃子はさすがに遠慮しようとすると、後ろから来た人に押し込まれてしまう。藤田の胸元に顔を押し付けてしまい慌てて上を向くと、汗だくの藤田が上を向いていた。降りると逃げるように離れて頭をさげる。
「すみません。階段にすればよかったです」
「いいんです。大丈夫」
額の汗をハンカチで抑えた藤田は、桃子を見つけてやってきた琴浦に気づくと
敵対心むき出しに桃子の前に立った。
「天野さん、管理官も連れてきちゃったのか」
苦笑いしている琴浦は、しかしあまり気にならないのか行こうかと歩きだしていた。
琴浦が連れてきたのは本庁からほど近いところにあるカフェだった。表は賑やかだったのに、奥のテーブルは静かで話しをするにはよさそうだ。
テーブルにつく前にタルトの並ぶショーケースを見ていると、琴浦が桃子の横に並んで同じように覗き込む。
「悩んでる?」
「桃のやつと、洋梨のやつとで迷ってしまって」
「シェアしようか」
「いいんですか?」
「藤田管理官に見せつけたいな」
「…それは流石に」
「えー?」
振り返ると藤田がじっとこちらを見ている。
「ほら。もうわかりやすくこっち見てる」
タルトは桃を選んだ。琴浦は洋梨にして、意地でもシェアすると笑った。
テーブルに戻ると、藤田が一つため息をついた。
「はっきりさせておきましょう」
「俺たち付き合っています」
「い、いつから」
「天野さんが風邪ひいた時から」
「君が押しかけて、無理やり」
「天野さんが選んでくれました」
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