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「日本全国にホテルとかレストランとかね。だけどあの一族、みんなあんな感じで」
見た目が好きじゃないのかと気まずく思っていると彼女は満面の笑みではっきりいった。
「私、昔からカピバラが大好きで。彼も、彼のご両親も兄弟もみんなそっくりなのよ」
「は、はい」
「お金持ちを捕まえたって周りには言われてるの。でもあの顔、見てるだけで幸せになれる」
まっすぐ背筋を伸ばし立ち上がった彼女はニヤリと笑う。
「惚気ちゃったわ。聞いてくれてありがとう」
勝ち取った勝者の微笑みだと桃子は思った。
「あなたも好きな人と幸せになってね」
彼女が男性の元へかけよるのを見送った桃子は、その場に座り込んだままロビーを行き交う人を見ていた。いろんな人達がいる。家族連れや若いカップル。老夫婦。一人でいるのは桃子だけだ。
「桃子」
眼の前に立った琴浦がにっこり微笑む。
「来てくれてありがとう」
「逃げてごめんなさい」
琴浦のバイクの後ろに乗せられて、ホテルから少し離れた砂浜へ行った。夕日が真っ赤に海と浜を染め、それを見る琴浦の横顔も茜色に染まる。
「バイク大丈夫だった?」
「足がまだガクガクします」
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