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「ああいう声を『素っ頓狂』っていうんだろうね」
そうって笑っている。楽しかったのだろう。しがみついた琴浦の背中はたくましかった。
「きれいですね」
「ここの夕日はいつもこうだよ」
「いつもこんなきれいな夕日を見てるんですね」
「君もここにいればいつだって見られるよ」
「琴浦さんて、いつもそういう言い方するんですね」
「そういう?」
「選ぶのはそちらですよって」
「だってそうでしょう」
「そうだけど、私ならこう言いますよ」
すうっと桃子は深呼吸する。
「明日も明後日も来週も来年もずっとずっと、一緒にここで夕日を見ませんか」
「…見ます。見たいです」
「ね?そうなるじゃないですか」
桃子は得意げになってそういう。きっと夕日が顔を赤くしているから、赤面していることは琴浦には気づかれないだろう。気づかれても、もういいのだ。
「桃子」
「はい」
「夕日もきれいなんだけど、朝日もとてもきれいなんだよ。一緒に見てくれる?」
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