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エピローグ
連休はあっという間に終わってしまい、桃子は戻ってから異動願いを出した。
「八丈島、ですか」
直属の上司である藤田は苦虫を噛み潰した、いやもっと酷いものを口に放り込まれたような顔で桃子が渡した異動願いを見ている。
「あのスケコマシがいるところですね」
「前から気になっていたんですけど、その言い方は下品ですよ」
桃子がいきなりそんなことを言ったので藤田は面食らった様子だった。
「で、ですがそれを言うならヤツの存在自体が下品でしょう」
「藤田管理官」
桃子は強くなったのだ。
「人の彼氏、いえ婚約者をそんなふうに言うのはやめてください」
「こ、婚約者!?」
「今ここで聞いたことを言いふらされたくなかったら、すぐに処理してくださいね」
「天野さん、君そういう子だったのか」
「ええ。お気づきかと思いましたけど」
メガネがずり下がった藤田ににっこり笑いかける桃子は自信と余裕に満ちあふれていた。
「私がこんなに言っているのに。君はわからず屋だな」
「ええ。自分のことさえ理解したのはつい最近のことですよ」
好きとわかった桃子は強いのだ。
「今までありがとうございました。藤田管理官」
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