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プロローグ
なかなかに良い調子だと、天野桃子は思った。中学高校をただ地味であるのが正しいと信じ生きてきた桃子は、地元の短大に入った後もその考えを改める機会を得ず、地味なまま就職し今につながる。良い調子だと思ったのは、地味であるだけではなく、その中に清潔さも備えている部分が見え隠れする程度に整った服装や髪形、化粧だったからだ。
洗面台の鏡に映る自分は、口を真一文字に結んでじっと見つめ返してくるのもまた良い。あまり口角を上げると忌々しいえくぼができるし、歯が見えてしまっては下品である。
「良し」
真っ白なブラウスと膝が隠れる紺のスカートに、ねずみ色のジャケットは最高の組み合わせだと思う。これに黒いパンプスを履けば正に理想の姿だった。
しかし二時間後には、心の底から自分が場違いな存在であると実感した。
婚活なるものに興味を持ったこと自体が間違いだったのかもしれない。ドレスコードさえ選べばお見合いパーティも大丈夫だと思いついたのも、今になってはバカみたいだった。
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