再会

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再会

結局あの人が在学中に話していた、春休みに会おうとか、5月は旅行に行こうとか、そういった話は忙しすぎて無理だった。 5月の連休に、あの人の大学進学後初めて会いに行くことになった。 どこか行きたいところは無いか?と電話で聞かれたがどこと答えることが出来なかった。 そもそも、俺とどこかに行って楽しめるのか分からなかった。 あの人が高校生だった頃、何度か学園の外でデートはしたが、それは閉鎖された学園から解放される時間だったからこそあの人も楽しそうだったのではないかとさえ思えた。 映画の趣味も合わないし、服の趣味も合わないし、カラオケもそんなに好きでは無かった。 ただ、貴方に会えればなんていう馬鹿みたいなセリフを口にできる訳も無く待ち合わせの駅に向かった。 電車を降りて、改札を通って周りを見回すと、あの人はもう着いていた。 目立つ人だ。すぐに見つかった。 向こうも、こちらに気が付いたらしく、軽く手を上げる。 思わず駆け寄ると、そんなに急がなくても大丈夫と笑われた。 相変わらず糸は俺の手とあの人の手の間を繋いている。 一か月ぶりの笑顔を見ただけで泣きそうになるなんて、どうかしている。     
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