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そのため国外に行った経験は無いけれど、一度本物のこの小さな魚の泳ぐ海を見てみたいと思った。
「綺麗だね。」
「そうですね。」
ただ二人並んで静かに水槽を眺めてるだけだ。
けれど、小西先輩は歩みを俺に合わせてくれていることも分かっている。
それに、俺がこの紺色の魚を気に入ったこともきっと気が付いている。
「夏休みにでもどっか旅行に行こうか。」
「そうですね。」
「うん、そうだね……って、ホントに一緒にいってくれるの!?」
俺が素直に頷くと思って無かったらしく、とても驚いていた様子だった。
小西先輩は、ニヤニヤとしまりの無い笑顔を浮かべながらとってつけたように次はクラゲだってといって俺の手を引いた。
デートみたいだなと思った。多分口に出して言うと、デートみたいじゃなくてデートだからと怒られそうなので何も言わなかったけれど、今まであまりしたことの無い恋人らしい過ごし方だなと、嬉しかった。
クラゲ水槽の周辺は真っ暗で一面クラゲが漂っていた。
クラゲだけがまるで淡く光っているみたいでまるで別世界に居る様だった。
地面に這う糸が見えない位展示スペースは暗く、水槽以外何も見えないみたいだ。
不意に手を引っ張られ、あの人の胸板に寄り添う格好になった。
「暗いからどうせ誰からも見えないよ。」
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