お似合い

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真っ黒な髪の毛に切れ長の瞳のその人は笑顔を浮かべながら俺に聞く。 「初めまして。俺、小西先輩に呼ばれてきたんですが。」 頭を下げて、手土産に持ってきた菓子を渡す。 「ああ。ありがとう。俺は内田聡って言うんだけど、多分小西の恋人のお披露目会に呼ばれたんだよな?」 その恋人ですと自分から上手く言い出せず困っていると、菓子を受け取ったその人は玄関のドアを開けて、どうぞと言った。 細長い廊下の向こう、リビングスペースをオフィスとして使っている様だ。 二人で進むと、ガラスの扉がある。 向こうの様子が良く見える。 ソファーでくつろいでいるあの人と、あの人が呼んだのであろう五十嵐君が見えた。 二人で楽しそうに話している姿は仲睦まじいという言葉がぴったりで、頭では五十嵐君との関係を心配する必要はないと分かっていてもそれでもズキリと胸が苦しくなる。 「あれ、もしかして小西の恋人かな?」 君知ってる?と聞かれるがなんて答えたらいいのか分からない。 「今日恋人を自慢するって言ってたんだよ。 結構友人も呼んでるらしいし。」 ああ、そうなのか。今日の事を詳しくは聞いていない。 一度会社見に来たらと言われて周りのやつらも紹介したいしと言われただけだった。     
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