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感動する彼に友人は「何が書いてあるのかわからない」と頭をかきながらも、また本選びを頼んできた。
次は趣向を変えて、騒音によるパニックSF小説。やはり彼の好きな作品にした。
こうして本と感想文が幾度かやりとりされ、彼は彼女の感想文を読むたび、心を震わせた。
彼女への想いが友情よりも強くなったある日、彼は友人に「4月23日は必ず彼女に本を贈れ」と告げた。
愛する人に本を贈るサン・ジョルディの日を知って張り切る友人に、心の中で謝りながら本を包む。
今回は戯曲だ。エドモン・ロスタンの『シラノ・ド・ベルジュラック』。恋文を代筆した男の物語。
イケメンにアプローチされた美女ロクサーヌは、醜男・シラノの恋文に心惹かれる――聡明な彼女なら、イケメンの後ろにいる彼の存在に気づくはずだった。
だが、予想に反し、彼女は友人と付き合い始めた。
なぜだ。レジで落ち込む彼のもとへ、彼女の友人が近づいてきた。差し出されたのはよりによって、『シラノ・ド・ベルジュラック』。
代金を払った相手は、そのまま彼にそれを差し出した。
「差し上げます。私から、あなたに」
戸惑う彼に、伏し目がちに相手が説明をする。イケメンに知的レベルを知られたくなかった美人は、本好きの友人に感想文を代筆させていたことを。
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