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「子宝ってなあね、何も女だけに非があるわけじゃない。男が種無しのことだってあるんだ。それを分かってないやつが多すぎるんだよ」
葉の膝に手を置いて、シヅは言い聞かせるように言った。
「だからね、あんたは気に病むことはない。胸を張ってりゃいいんだよ」
「おシヅさん……。ありがとうございます」
目尻に涙を光らせて、葉が微笑む。
『歯に衣着せぬ女人だな。いっそ清々しい』
感心したような實親の言い様を耳に捉えながら、葉に訊ねた。
「単刀直入に訊くんだが、誰かに恨まれるような心当たりはあるかい」
「えっ」
葉は目を丸くして真白を見返す。
「恨まれるなんて、そんな……」
「まあ、そりゃそうだよな。だがたとえば、蔵屋の家人でも女中でも、特に当たりの強いやつとかいなかったかい」
葉は指先を顎に添えて考え込んだ。
「嫌がらせはいろんな人にされてましたけど……」
「嫌がらせ? 」
「ええ。雑巾がけをしているときに水をひっくり返されたり、掃除を済ませた部屋に塵を撒かれたり。干した洗濯物を落とされていたり」
「……結構えげつないことされてたんだな……」
真白の呟きに、シヅが肩を竦めて言う。
「女ってのは陰険な生き物さ」
『あなたの言葉の説得力は凄まじいな。やはり年の功か』
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