5人が本棚に入れています
本棚に追加
1-4 激情の炎、夜闇の死闘
突如、夜闇に包まれた村の中から上がった悲鳴。『火事だ!』と叫ぶ誰かの声の合間に、クルーデの名前も微かに紛れていたのをテリオは聞き逃さなかった。
「クルーデ……!」
嫌な予感がテリオの脳内を埋め尽くしていく。その顔は先ほど寝込んでいた時のように青ざめていたが、ザワザワとした感情を抑えきることなどできず。気が付くと足を動かしていた。
「テリオ! どうするつもりだい!?」
「クルーデを止めてくる……! 先生はみんなと避難していてくれ!」
自室から剣を取ってくるなり、孤児院を飛び出すテリオ。悲鳴の聞こえた方へ向かうと所々から火の手が上がっており、その中心には炎によって朱く照らされているクルーデの姿があった。
――のだが、テリオは強烈な違和感を覚える。
テリオが目を凝らした先に映るのは――クルーデに纏わりついた、黒い靄のようなもの。背筋に纏わりつくような嫌な感覚を押し殺し、テリオはクルーデの方へと歩を進めていく。
最初のコメントを投稿しよう!