邂逅というべきか

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とある日曜日、俺は公園のベンチで日向ぼこをしていた。 義務教育が終わり、公立の普通高校から特に特徴の無い大学に行った。高校も大学も担任に薦められたものを選んできたので、特に悩まなかった。 就職も悩まなかった。今の会社はゼミの同級生が受けるからというので、じゃあ俺もと受けて無事入れた。同級生は落ちたな。 ほぼ悩みの無い人生を送ってきたが、今回はさすがにちょっと悩んでいる。 「お悩みですか?」 いつの間にか隣に座っていた男に、声をかけられた。 黒づくめのスーツに黒の帽子、靴や靴下まで黒い。シャツは白だがネクタイも黒、葬式の帰りのようだ。 見ず知らずの人に分かるくらい悩んで見えたのかな、答えずにいると、男は言葉を続ける。 「まあ会社を解雇されたら、大抵悩みますよねぇ」 さすがに、ぎょっとした。そんな俺の様子をみて、黒づくめはにこやかに話しを続ける。
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