青春

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告白します。 犯行時は気が動転していて、何も覚えていません。気が付いたら路地裏で、警官に取り押さえられていました。その時の感情は、特にありません。無です。すべてきれいさっぱりなくなりました。私は普通の人間だったのだと思いました。 私は人間です。 ただし、私は人生に何の思い出もない。何の思い入れもない。 犯行時の衝撃で忘れたわけではないと思います。最初からなかったのです。 時々、思い出だけでなく、犯行時まで私の中に巣くっていたあの黒い感情、A子さんやネットの人たちに抱いていたあの感情すら、最初からなかったのではないかと考えることがあります。 そのたびに、私は背筋が凍るような恐怖に襲われ、夜も眠れません。
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