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「うわっ」
思わず、耳を塞ぐ。
何なんだこの音は。
一体、何が起きてるんだ。
あまりにも大きい音に耳は麻痺し、視覚までもやられているようだ。
目の前の空間がゆがんだように映っていた。目が痛い。けれど、閉じやしない。悠十の姿を確認したかった。
「茉也、ここ」
は、として俺は悠十の声をたよりに彼と向き合う。
悠十が、俺の片方の手をとって自分の手を握り込んだ。
それは、握手と呼ばれるものだった。
一方的な、強引な握手。
「ねえ茉也、今だから言うけどさ
案外、『ゆうじん』て呼ばれるのも悪くなかったよ」
でも、だから。さよならだ。
今まで楽しかった、ありがとう。
悠十は確かにそう言って。
それから、ふと身体を手繰り寄せ、耳元へそっと囁いた。
ーーうまくやれよ。
「……」
うまくやれだって?
一体何を。
俺は、名前を呼ぼうとして、
そして 誰かに握られていた温度が、残ることなく消えたのを感じて。
意識が、そこで途切れた。
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