Ⅲ.胡桃にまつわる外の世界

2/14
前へ
/141ページ
次へ
まずね、この世界の話をしようと思う。 世界というと何だか大げさだけど、窓庭学園と、窓庭研究所があるここのお話…要は「胡桃」の中のお話ね。 「胡桃」という()(じつ)に頑丈よね。振ると中身があることは分かるんだけど、外的衝撃でもなければ中身を取り出す事はできない。「入れ子」の表現にしては最適だと思うわ。 さて、その胡桃をaとして、それをbという空間に置く。すると、世界は二つ出来あがる。aという世界とbという世界。胡桃の中に閉じ込められた頑丈な世界と、中からは知る由もないそこよりも広い世界。逆にいえば、その広い世界からは、割らない限り胡桃の中の世界がどうなっているか関知できない世界……うん、その通りよ酉御くん。 私達が今ここにいる世界というのが、aという世界。 私達は頑丈な殻の中に生きている。何も気づかず、何も行動を起こさない限りは、この青い殻の中で一生を過ごし殻の中で死ぬの。夢から醒める権利を、剥奪されたままね。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加