Ⅲ.胡桃にまつわる外の世界

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そうして生まれたのが、背後に研究所を抱えた学園を主体とした、独立世界。 冠のようについてる「窓庭」っていうのは……この独立世界を維持するための仕組みやプログラムを発案した元研究室(オリジナル)の名前。 それを使いたい部分だけ、外の世界からここへ持ってきて、大げさに増築展開したってわけ。まったく酷い話よ。元々あった「窓庭研究室」への尊厳もあったもんじゃない。名前を奪われ穢されたも同然よ……そも、元研究室(オリジナル)が発案自体を提供しさえしなければ、こんな事にはならなかったんだけど、それは今更悔いたところで何も出ない。発案者はその事実を胸に刻みつけ、悔いを改める事に尽力するしか道はないと思ったの。 その理由は貴方達にも分かってると思う。この世界は狂ってる(破綻してる)。この判断は、中にいる私達が測っていいに決まってる。 倫理や概念はヒトが生まれながらに持つ権利よ。何故外の世界の都合で、中の世界のそれらが奪われている現状を、そのまま認めないといけないの。そりゃ、知識達を忘れない力に不便はないわ。自然治癒力の頂はとてつもない財宝よ。 でもね、肝心の胡桃の中の住人達は、それがどんな凄い事かも知らされていない。本人達がその感覚を得られていない以上、そこに何の意味があるっていうの。自覚がないまま超人的な力を使わされ、また当然の権利を放棄させられ続けて、それを手のひらの上で観察されてるの、貴方達は。
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