Ⅲ.胡桃にまつわる外の世界

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……ごめんさない。鬱憤(うっぷん)を吐き出せる相手なんていなかっものだったから。うん、ここは「外」からも「窓庭研究所」からも感知や干渉できない場所だから、問題はないのだけどね。 外の話は一旦お終い。次に、今私達がいるこの「中」の世界に目を移そう。 この計算され創出された世界、先の「超人的な力」を住民の皆が皆、無条件で享受できる、という簡単な話じゃない。何故かって言うと、ここがあくまで計算式の中、プログラムの世界だからさ。優れたる知能は、その脳の中で迅速な処理計算を連続して行い続けているものだ。塩貝さんをはじめ、ここの住民達は自分自身でそれをやっているんだよ。R値やMD値は、学生達の間で色々名付けられてきたけれど、R値に関してはほとんどご明察。貴方達が言うようにその個人のパロメーターのようなもの。MD値は……正式には、MDTの事で、略語なんだ。 書くと、こうなる。 " Much Delay time  " 直訳すると、たくさんの遅延時間、ね。 でも私はこれを、少し組みかえてこう呼んでいるの……勝機への期待と、これが残っていたことへの感謝をこめて。 " Majestic lag " ―――偉大なる時差 、とね。
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