Ⅲ.胡桃にまつわる外の世界

10/14
前へ
/141ページ
次へ
************ ―――ハナシハ ホントウダヨ 尾花さんが口を閉じてすぐ、初めて聞く声が響いた。 すべてを飲み込める状態ではなかった。でも、俺は小さく頷いた薬代を見る。 差し伸べられた手には、小さな記憶媒体がいる。 俺は尾花さんから聞いた、人物名を口に出す。 「『葉坂悠十』か?」 ―――ソレ ハ ゼンニンシャ ノ ナマエ USBは自身を葉坂悠十とは認めなかった。 しかし、一旦空白を挟み、またデータが再生される ―――デモ、オボエテル ボク ガ カレ ダッタ コト 「……そうか」 その電子音と記憶は、鮮明には繋がらない。でも、例えば最初から備わっている機能のように、俺は、その『葉坂悠十』という存在を、感覚全体で認めていた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加