Ⅳ. 羽を広げた、このよき日よ

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配管をつたって数十分後、監視の目(俺には全く分からなかったが、あらゆる場所に設置されているらしい)を掻い潜りながらも、俺達は着々と「ソラ」付近に近づいてきていた。 長時間低姿勢腰でいる為、関節に違和感が蓄積していく。治癒ツールで違和感を消しながら、ふと思った事が口をついた。 「監視といえば、彼らの存在は問題ないんですか?」 「彼ら? ああ、こいつらの事ね」 振り返えらないまま、尾花さんは自身の周りを指で5回示す。今、尾花さんは5人の男達に囲まれながらこの狭い通路を進んでいる。俺には認識できない光景を思い描いてみると、なかなかきびしい構図だ。 「安心して。この時間はメンテナンスに入ってるから、今の私の動きは知られてない。研究所に対しての敵意がないという事を私自身が証明する為に、今日まで我慢して付けられてきたのだから」 「随分とアナログなシステムですね」 「外はもっと随分なアナログよ。前にも言ったけど、ここは外の世界が抱いている夢を願望を持って実行してみている、手のひらサイズの小さな世界。色んな技術をツギハギして試し試しやってるの。調べてみると割と穴があったりするし、何より……曲がりなりにも発端は私の研究だったんだもの。一番わかってるって信じたい」 「そうですね」
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