Ⅲ.胡桃にまつわる外の世界

12/14
前へ
/141ページ
次へ
「……正直、混乱してます。でも、他の同期生たちがよそよそしかった理由は、呑み込めました。納得も、できました」 不要、という烙印に、彼らは常に怯えていた。 彼らという人格は消滅し、この世界を維持している「ノウ」へと還っていく。 いずれ「ノウ」となる俺を、彼らがどんな気持ちで見ていたのか、今ならきっと想像できる。 「それに俺はきっと恵まれていました。その事情を知りながら傍に居てくれた友人達がいた。薬代、そんな顔するなよ」 「うん、しない。わたしはうれしいの。本当に友達になれたみたいで、うれしいの」 ―チュウイ シオガイヤクヨ、スイブン エンブン アタルト データトブ 「あっ ごめんなさい」 塩貝薬代と「葉坂悠十」という理解者がいたから、事実を知った今、俺はそんなにショックを受けていないのだろう。 自分以外の存在を気にかけられる事は、きっと自分を保つための力になる。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加