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「よう、今日もここに居たか」
そう言って弁当箱を持った手を掲げて、僕の目の前の席を陣取った大柄の男が居た。
そう他人行儀に話をしてしまうと、知り合いでも何でも無いのかと思われてしまうかもしれないけれど、そんなことは無い。
数少ない僕の友人である彼は、美作という。下の名前は、あまり言わないから忘れてしまった。
「やっぱりこの席が一番だよな」
次にやってきたのは同じく日替わり定食を注文した宏明だった。
何故下の名前で呼ぶかと言えば、それは単純明快。
……僕と彼は同じ名字だからだ。
だから仲良くなったのであって、だから話し相手になったのであって、それは偶然であり必然であったのかもしれないけれど。
僕はその言葉に頷き返すと、
「やっぱりここが一番……というのは確かにその通りな気がするね。それに、ここはウォーターサーバーが一番近い。水のおかわりをするのが一番良いんだよ」
「確かに、そう言われてみるとそうだな。……普段はここあまり空いていないしね」
「そういえば、話をまったく変えるんだが」
美作が突然なにかを言い出した。
僕たちはそれを聞いてそちらに耳を傾ける。
「……聞いたことはないか? この高専に七つの都市伝説がある、って話」
「……それ、都市伝説というより、七不思議と言った方が近いんじゃない?」
「そりゃそうなんだけれど。でも、七不思議って言うには七不思議らしくないというか、何というか……。けれど、大なり小なり不思議はいっぱいあるらしいんだよ」
「へえ、じゃあ、小さいのは?」
「国語の平井先生の弁当はいつも重箱説」
「ぷぷっ」
思わず吹き出してしまった。
確かに平安貴族みたいな顔をしているけれど、流石にそれは無い。
ってか、この前明らかに手作りのおにぎりとミートボールを頬張っているのを教員室で目の当たりにしているし。それは明らかなデマだな。
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