24人が本棚に入れています
本棚に追加
それが何なのか、知っている。
どういう事なのかも分かっている。
逃げ出したいが、そんな事をした所でどうにもなるものではない。
父と母からも「どうにもならない、だから相手にするな」と云われた。
諦めるしかなかった・・今は。
小高い丘の上まで、均一な大きさにカットされた美しい石畳が、なだらかな坂道のずっと向こうまで続いている。
沢山の商店が軒を連ねる繁華街からさほど離れてはいないのに、辺りはひっそりと静まり返っていた。
時折、クリスマスパーティーの歓声が聞こえてくる。
子供達の楽しそうな笑い声が、何故か今日は切なく感じてしまう。
雪はその石畳に、屋根に静かにうっすらと白いベールを掛けている。
今も、少女にゆっくりと覆い被さる様に・・雪は降り続けていた。
が、彼女には雪をじっと眺める様な余裕は無かった。
彼女の数十メートル後ろには・・黒いトレンチコートに黒いハット、全身黒づくめの男が二人、時折物陰に隠れつつ後ろから少女を付けて来ていた。
まるで漆黒の闇という名の魔物が、隙あらば自分に矢を射かけようと、手ぐすねを引きながら追いかけて来ているかの様だ。
少女はまるで急かされるように、足早に坂道を駆け上がって行く。
最初のコメントを投稿しよう!