間諜と謀略の狭間で

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 その中年男性は、癖の強い濃い赤毛に青い瞳、シャツの隙間から僅かに覗く白い肌が、しっかりと日に焼けている。  首からは、ドッグタグだろうか・・ペンダントの様な物を下げていた。   少しだけ釣り上がった大きめの瞳に、同じく少しだけ皺の有る頬に顎の無精髭がやたらその男には似合っていた。  薬指に指輪は無い。  だが、どう見ても40は超えている。  この男、それなりの年齢の割に、未だ独身らしい。  がっしりと引き締まった細身の身体は、180㎝ほど。  麻の混じった芥子色の生地のスーツ上下に、細いブルーのストライプの入ったマオカラーのシャツの前をはだけ、胸元にはさり気無くチーフを飾っている。  一見、南洋帰りの軽薄そうな成金の白人、とでもいう感じに見える。  あるいは、詐欺師かペテン師か。  だが、気配を殺した宇佐の後ろを取り、双眼鏡とサイダーを取り上げるなどいかに練度の高い軍人でもかなり難しい事だ。  それ程に、5人の中でも宇佐は気配を殺すのが特に上手い。  返して云えば、宇佐の前では気配を消すのは至難の業だと云う事になる。  だと云うのに、この男はいとも簡単に宇佐の背後に気配を殺して回り込んだのだ。  確実に言えている事は、同業者(スパイ)か、若しくは殺し屋か。     
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