間諜と謀略の狭間で

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 一旦気を落ち着けなければ、この後の任務に支障が出そうだったからだ。  (くそ、震えが止まんねえ・・何者なんだ、あいつ・・・)  宇佐の腕は、自分の能力を超えた男の存在に動揺し、少しだけだが震えていた。  この数年で宇佐の後ろを取った事が有る者は、草壁敬重と隆一郎、村雨の三人だけだった。  しかし・・宇佐は恐怖に震えているのではなく、武者震いで震えていた。  (次は絶対に後ろを取られる前に、確実に仕留めて見せる)  「・・・はぁ~・・・僕もまだまだだな・・」  バイクを路肩に停め、大きく深呼吸すると・・悔しさで空を見上げた。  数分空を見つめて、気を落ち着けて視線を下ろすと、眼前、倉庫街の片隅に白いクーペが停まっていた。  先程、キンキラのクルーズ船の前に止まっていた物とは、色が違う。  中で動く人影を、バイクで横を通り過ぎる瞬間にちらりと横目で確認する。  その瞬間、彼の眼は絶対に有り得ない物を見つけてしまった。  あまりの動揺にバランスを崩し、バイクから転げ落ちそうになりながら、どうにか車体にブレーキをかけ停車させた。  そこそこスピードの出ていたバイクを、脚も使い半回転しながらブレーキを掛けた為、周囲に砂埃が激しく舞い上がった。     
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