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「・・嘘だろ、何でお前が生きてんだ・・・?」
バイクはその車を10m程行き過ぎて停車した。
バイクを停めようとすると、運転席側に座った男がすかさず銃を取り出し、助手席側に座る男のこめかみに銃を擦りつけた。
運転席側の白人の男は、宇佐に解る様に唇を大きく動かして「来るな」と警告した。
助手席の男は宇佐に気付くと同時に、取り乱しながら窓ガラスをバンバンと拘束具で拘束された腕で叩き、泣きわめきながら「助けて」と絶叫した。
その男は・・・去年の暮れに自害し、死んだ筈の麻生 正隆だった。
麻生正隆は事情が有って姓こそ違ったが、隆一郎の実の弟だ。
宇佐はあの時、自殺した正隆の葬儀にどうにか間に合い、駆け付ける事が出来た。
彼の棺桶の中の無残な死に顔も、拳銃自殺した際に部屋に飛び散った血痕もちゃんと見た。
しかも、ショックで憔悴する小百合達になり替わり、宇佐達が先頭に立って葬儀を取り仕切り、遺体を焼却場で焼き、骨壺に骨も拾い入れ墓に収めた筈だ。
それなのに。
あれは・・あの死体は、棺桶の亡骸は、遺骨は、間違いなく正隆だった。
その記憶に間違いはない、絶対に。
なのに、何故か目の前に彼は存在した。
生きて、しかも何者かに拉致されている状態で。
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