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唇を噛み締め、バイクのアクセルを全開にしながらその場から走り去った。
しかし、またしても。
今度は埠頭の外れで、また一台別の車が停まっていた。
その車を背にしてもたれ掛かる様に、腕組みした大柄な中国人の男が立っていた。
筋骨隆々なその男は、宇佐を見て、不遜な面持ちでニヤリと笑った。
その不遜な顔には見覚えが有った。
服の上からでも解る位の精悍な体躯、吊り上がった細い瞳に肉の付いた太い鉤鼻、太い眉に薄い唇。
浅黒いその肌に、三つ編みに編み込んだ長い髪が良く似合い、映えている。
男は何処から見ても解る、緑色の中国の民族衣装を纏っていた。
年の頃は・・３０過ぎ位と思われた。
宇佐はバイクを減速させ、男の横にバイクをゆっくりと停めた。
「...?，我敢肯定，是安踏汪国峻？ 将?在干什?，?是在??的地方是什?？」
（・・やあ、確かアンタ汪国峻だったよね？ こんな所で何してんのさ？）
言葉は相手に合わせて、最初から中国語だ。
宇佐がバイクに跨ったまま、手袋をつけたままでゴーグルを持ち上げた。
その顔は何か言いたげで、それでいてあからさまに解る位不機嫌だった。
宇佐も勿論、表情のコントロールは出来る。
その訓練も受けている。
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