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バイクを走らせ、国峻の車の後を追いながら宇佐は先程の正隆の事を思い出していた。
やはり・・あの場に置き去りにして来た事への後ろめたさは、殊更強く強く感じていた。
あの場合はやむを得なかったとはいえ。
そして・・・霧島を思い出していた。
(涼二は、僕を恨むだろうか・・)
霧島涼二と麻生正隆は、ごくごく短い時期だったとはいえ恋人同士だった事があった。
少なくとも、宇佐の中ではそう認識していた。
霧島涼二と宇佐仙吉は、過去に恋人同士であった訳でも、現在恋人な訳でも無い。
彼等には、“幼馴染み”という表現が一番しっくりくるのではないだろうか。
彼とは元々親同士が同郷出身で仲が良く、家族ぐるみで付き合いが有った。
下級武士であった互いの祖父は脱藩し、東京に出て来た。
それがたまたま東京で再会し、意気投合して下町の同じ長屋に住みついた。
当時東京には、明治維新によってもたらされた改革で、仕事にあぶれた脱藩者や失業者があふれかえっていた。
そんな中、数少ない仕事にどうにかありつき、仕事を転々としながらも、互いが互いを支えあい、激動の明治・大正期を必死に生きて来たのだ。
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