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何故なら、涼二は恋人が出来る度に仙吉に紹介していたからだ。
「お前にだけは隠し事はしない」涼二のそれはモットーだったらしい。
だが、正隆だけは何故か紹介されなかった。
それどころか涼二は、何かにつけて家でも道場の稽古でも正隆を庇い立てたり、嘘をついてまで正隆を守ろうとさえしていた。
そんな事を自分以外の者にしている所は、今まで一度も見た事がなかった。
何故かあの時、涼二から裏切られた気がしてしまったのだ。
そのもやもやした感情は“嫉妬”と云う二文字で片付けられるのだが、仙吉はそれを認めても納得してもいなかった。
その後もずっと何処かわだかまりを感じ続け、仙吉は正隆をやんわりと避けて来ていた。
そしてそのもやもやを引き摺ったまま、気が付けば正隆は事件を起こした挙句自殺してしまい、既にこの世を去っていた。
ただでさえそんな仔細があると云うのに、重ねて今回の一件は仙吉の心に尚一層の後ろめたさを感じさせずには居られない“事件”だったのだ。
(くそ・・・何て日だ)
バイクのスピードを上げ、気持ちを振り切る様に中華街へ向かった。
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