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「つ、月野さん!」
トイレに行く素振りだけは見せようとその方向へと歩き出す前に声をかけられ立ち止まる。
「あ、あやめさん。今日はどうしたの?営業部の林くんにランチ誘われてたんじゃ?」
首を横に振って月野さんに話があって、少し付き合ってくれない?と言われて断る理由もないので素直に頷いて屋上を指さして歩き始めたが屋上は立ち入り禁止になっているのでその手前の階段まであやめさんは一言も言葉を発しなかった。
「カレンさん達から聞いたでしょ?私のこれから」
「え、えぇ。受付嬢なんですってね、おめでとうございます」
ありがとうございますと微笑んでから、少しだけ悲しい顔をし、意を決したかのように私の瞳を真っ直ぐに見つめて話を切り出した。
「月野さんのおかげで私、ここの事務処理頑張れました。他の先輩たちはなかなか教えてくださらなかったから」
「そうね。あまり事務処理が得意じゃない人たちだったもの、でも、人とのあいだに立つのはとても得意な人たちよ」
「えぇ、もちろんそれはわかってます」
お互いに苦笑いを、しながらもあやめさんは話を続けた。
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