第2回   セレンと仮面の魔導師(2)

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馬に袋を括り付けに行った鞭の男が怒鳴ってた。 「頭!帰ってきやがったぜ!!」  黒布がセレンの腕を掴んで引きずって外に出た。栗毛の馬の側にヴィルトが立っていた。セレンはその姿を見て、泣き叫んだ。 「師匠(せんせい)!」  ヴィルトがゆっくりと歩み寄ってきた。 「よくここがわかったな」  黒布が睨み付けた。 「この小娘が街道でおまえの帰りを待ってたんでな、ここまで案内させたんだ」 ヴィルトの足が止まった。 「この森をひとりで…」  セレンが顔を伏せて泣いた。 「ごめんなさ…い、心配で…ごめんなさい」  言いつけを守らなかった。もう捨てられてしまうと思った。 「すぐに帰ってこられず、すまなかった」  ヴィルトがふたたび足を進め始めた。鞭の男は鉈のような打ち物を構えた。黒布が手の短剣をセレンの喉に突きつけた。 「とまれ」  ヴィルトは止まった。黒布が少し下がった。 「金も宝石も好きなだけもっていけばいい。だが、その子は傷つけるな」  黒布が怒りについに罵声を上げた。 「気取りやがって!そんなにこの小娘が大事か!」 黒布の手が動いた。同時にヴィルトも動いたが、間に合わなかった。短剣がセレンの喉を刺し貫いた。叫びを上げることもできず、セレンは血を噴出して事切れた。 「セレン!」 「ざまみろ、いかさまヤロウ、せっかく助けたのに、無駄だったな!死体でも抱きやがれ!」  セレンのなきがらをヴィルトの足元に投げつけた。鞭の男が大鉈を振り下ろしてきた。ヴィルトがその方を向いて、仮面に手をやった。 「うっわわわわあっ!」  鞭の男が凄まじい勢いで霧のようになって、仮面を取った中に吸い込まれていった。 「なっ、なんだ!?」
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