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またな、チャンピオン
もしも結婚式でヒーロー・インタビューがあるならば言ってのけたい。やってのけたい。
「放送席―、放送席―、今夜の勝者は中山ちひろ選手です。おめでとうございます!」
眩いカクテル光線が私を包む。アナウンサーがマイクを私に向ける。
「ありがとうございます! 私もこんな結果になるなんて、正直思っても見ませんでした!」
もちろん嘘である。最初からケモノの如く狙っていた。ハイエナ中山とお呼び。
「どうでしょうか、最終的に決め手になったのは右ストレートでしたが、途中、どうでしたか? 苦戦していたようにも見受けられましたが。元チャンピオン、やはりタフでしたか?」
「そうですね――細かい話をするつもりはありませんけど――」
ここで苦笑を一つ入れる。今日の戦いがにじみ出たその笑いに、事情を分かっている観客がドっと湧く。いいぞ、今日は私の日だ。なんと言っても、私のヒーロー、もといヒロイン・インタビューなのだ。
「やはり入念な準備と、対戦相手の研究が最終的な結果に繋がったんだと思います!」
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