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父のことが嫌いだった。
いつも変な臭いがした。酒やタバコは一切嗜まない人間だったから、加齢臭かなにかだと思う。もしかしたら、よく齧っていたレモンの酸味の臭いだったのかもしれない。
品行方正と言えば聞こえが良い。実態は、ギャンブルを嫌悪し時計より同じ平日を繰り返す面白みも何もない人間だった。だからと言って、仕事中毒のワーカホリックってわけでもない。何が楽しくて人生しているの? って訊きたくなるようなタイプだった。
その癖に、私の人生にやたらと首を突っ込んできた。親だからという理由で学校の成績や生活態度とかに口を出してきた。勉強しろだの、どこどこの学校に行けだの命令してくるのは余計なお世話で、本当に鬱陶しかった。
作家になりたい。という私の夢も簡単に否定された。真っ当に小説を書いたことすらない人間がどうして小説家になれるのか? そもそも、小説家になれたとしても、ヒット作を生み出せるかどうかすらわからないのではないか。今と同じような生活が出来るとでも思っているのか? などと偉そうに説教してきた。
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