サクラチル? サクラサク?

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 花見の場所取りかぁ‥‥新入社員の身としては抗えない命令。  他にも場所取りの人達が、各々暇つぶしをしてる。  あー、本とか持ってくればよかった‥‥ん、今横切ったのは? 「ちょっと待って!」  思わず声をかけた。  似ている。  しかし、彼女は自分に声がかけられたとは思っていないらしく、歩く速度が変わらない。  思い切って、走り出した。 「キミだよ、待って」  ちょこんと後ろから肩に軽く、一瞬だけ触れる。 「はい? どちら様? ストーカーとか痴漢は、お断りします。気安く触れないで下さい」  振り返った彼女の辛辣な言葉。  ドキッとするほど綺麗‥‥淡い桜色に囲まれた中で、それよりも濃いピンクの服を着た女性。  風が吹いて、桜吹雪が更に彼女を美しくさせる。 「臼井(うすい)美桜(みおう)さんじゃないですか?」 「なぜ名前を知っているのですか? ストーカーなら警察に通報します」  冷静にスマホを取り出す彼女。 「待ってってば! 覚えてないかな、同じ旭川アニメーション学院の同級生で、宮原(みやはら)徳人(のりと)」  慌てて自己紹介する。 「そんな名前に心当たりは有りません。出身校まで調べ上げているとは間違いなくストーカーですね」  スマホを操作しかける臼井さんを遮るように名刺を差し出す。 「マジでストーカーじゃないですって!」  彼女は汚い物を摘むように名刺を受け取る。 「フィットスタジオ・アニメーター‥‥自慢ですか? 不愉快です」  名刺を落として踏みにじる。 「ちょ、酷いなぁ‥‥」 「私は就職できませんでした。嫌味としか思えません」 「えっ!? 臼井さんのCG、クオリティー高かったよ。特に女性CG‥‥そっか、ごめん」  彼女のCGの数々、今も忘れない。 「それでは、さようなら。二度と私に付きまとわないで下さい」  臼井さんは、背を向けて歩き出す。  精一杯の勇気を振り絞る。 「俺‥‥学院時代から、臼井さんの事、片想いしてました! お付き合いして下さい!」  精一杯の声で叫んだ。  もう一度、臼井さんが振り返る。  俺は学院で臼井さんが気になるようになった。  クールで友達を作らない孤高の存在。  結局、想いを伝えられなかった高嶺の花。image=510450509.jpg
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