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咄嗟に間に割り込むと顔面を殴られた。
「更に今、暴行を受ました。鼻血も出てます」
淡々と話す臼井さん。
あー、鼻血が垂れ落ちる。
パトカーのサイレンが聞こえる。
「出所早々‥‥ちっ、覚えとけや!」
ヤバイ人は逃げ去った。
少し遅れて警察官が来た。
「痛そうですね‥‥犯人は?」
「あっちに走っていきました。サングラスにパンチパーマ、黒っぽいスーツ、ネクタイは青でした。顔写真はこれです」
「通報と御協力、有り難う御座います。手配します」
もう一人の警察官が無線で特徴を話し始めた。
「怪我は大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫‥‥です」
ティッシュで血を拭いてから、鼻に詰める。
俺、今カッコ悪い顔してるだろうな‥‥。
「明らかに危険人物と思われる人に無闇に関わらないで下さいね」
「はい‥‥有り難う御座います」
直角の礼をして警察官を見送る。
「おー、宮原。食いもん買ってきたぞー」
「あ、先輩、お疲れ様です!」
「殴られたのか? パトカーがサイレン慣らしてたけど」
「まあ、何とか、なりました」
「で、こちらの女性は?」
「旭川アニメーション学院の同期で、就活中らしくて紹介しようかと」
「臼井美桜です。宜しくお願いします」
軽く礼をするけど、クールな立ち振舞は変わらない。
先輩がシートに買い物袋を置いて、腕で首から巻き込んで彼女に背を向ける。
「コレか?」
こっそり、小指を立てる先輩。
「残念ながら片想いです」
俺から腕を離して、彼女に向き直り、
「私は、こういう者です。今日は当社フィットスタジオのお花見です。美女歓迎しますよ」
名刺を渡す先輩。
「有難う御座います」
ちゃんと両手で名刺を受け取る臼井さん。
間もなく課長が同僚を引き連れてやってきた。
俺は、臼井さんを紹介して面接を取り付けた。
*
後日、採用された臼井さんは、俺の隣のデスクに配属。
仕事が楽しくなった。
恋愛成就を祈って‥‥。
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