頼れる先輩

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頼れる先輩

「おう、宮原。昼飯一緒に行くか? 臼井ちゃんは‥‥いないのか」 「臼井さん、お昼休みには、サッと消えちゃって‥‥」  先輩が俺の首に腕を回して囁く。 「で、臼井ちゃんとは何か進展あったのか?」 「それが‥‥一度も会話すら出来てなくて」 「おまっ、もう1ヶ月だぞ。あんな美人、他がほっとかないぞ」 「ですよね‥‥」  そうだよ、臼井さんを好きなのは俺だけとは限らない。  このまま何もしなきゃ、臼井さんは別の誰かと付き合い始めるかもしれない‥‥そんな事も気付かなかったなんて! 「とりあえず飯食いながら話そう。社食と外食、どっちがいい? いや待て、社食にしよう」 「はい、お供します」 「うーん、臼井ちゃんは居なさそうだな。外食派か?」  食券を買った先輩が社食内を見回してる間に俺も食券を買った。 「おし、席はあそこにしよう」 「はい」  同じ原画チームの同僚の男性陣が昼飯を食ってるトコに、ちょうど席が2つ空いてる。 「よう、相席させてもらうぜ」 「あ、芳村さんと‥‥宮原か。どうぞどうぞ」  先輩の名前は、芳村(よしむら)茂雄(しげお)さん、25歳。  先客は、お花見を一緒にした同僚、先輩。  課長に誘われて断るバカはいないよな、フツー。 「お邪魔します」  先輩の隣に座って割り箸を割る。 「なあ、ウチの原画チームに入った臼井ちゃん、美人だよな」  ぶっ、いきなり臼井さんの話!? 「美人ですねー、まだ話したことないッスけど」 「そうそう、美人でミステリアス。近寄りがたい雰囲気まとってるけど、いいよな」  先輩が、うんうんと頷いてから、 「臼井ちゃんと付き合いたいヤツ、挙手」  ちょ、マジっすか!? 「そりゃあ、あんな美人が彼女だったら‥‥」  妻帯者以外、全員手を挙げた、ヤバイよ。  俺も、おずおずと手を挙げる。 「悪いが諦めろ、オレも狙ってる」  ちょ、先輩!? 「芳村さん相手じゃ勝ち目ないッスよ」  全員手を下ろした、俺も合わせる。  ってか、先輩も狙ってるなんて聞いてないよー‥‥絶望的だ。
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